国連と提携した初の高級時計ブランドとなる若きスイスの時計メーカーが、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を象徴し、支援する時計を発表した。
多くの時計ブランドがサプライヤーから開発素材、還元を目的としたパートナーシップまで、あらゆる事業活動においてこの点により重点を置いているのを目にする。
ID Geneve Circular C SDG Limited Edition
アイディー・ジュネーブは5年前にサステナビリティを中核的な使命として創業された。だが、このブランドはこれを現実的に捉えることを目指している。「私たちが時計で世界を変えることはありません。しかし私たちは時計をプラットフォームとして使い、世界がどのように変われるかを示します」と、CEO兼共同創業者のニコラ・フロイディガー(Nicolas Freudiger)氏は語る。
わずか2年前、同ブランドは、レオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)氏ら投資家からの出資により200万スイスフラン(当時のレートで約3億2990万円)のシードラウンド(資金調達)を受けたことで同ブランドは大きな成長と注目を浴びた。これが国連との今回のパートナーシップへと繋がり、商業的な共同製品で国際組織と正式に提携した初の高級時計ブランドとなったのである。
ID Geneve Circular C SDG Limited Edition
新作サーキュラーC SDG限定モデルのデザインは、2015年に国連が設定した、手ごろな価格でクリーンなエネルギー、責任ある消費と生産、持続可能な都市とコミュニティを含む17の持続可能な開発目標(SDGs)から遊び心あるインスピレーションを得ている。しかしこのモデルの核となる焦点は、裏蓋、ベゼル、ダイヤルに使用されている素材にある。記念すべきシードラウンド(資金調達/2023年)を受けた年、同ブランドは新しいサプライヤーであるコンプペア(CompPair)社と戦略的パートナーシップを結んだ。コンプペア社はこれまで、モビリティ、航空、宇宙産業における複合素材のイノベーションに特化し、主にふたつの目標を掲げていた。それは材料の寿命を延ばして廃棄物を削減し、最終的に複合材料の完全な循環性を実現することである。
アイディー・ジュネーブはこれらの素材の一部にウォッチメイキングに活用できる可能性を見出し、その年の後半、フラッグシップラインであるサーキュラー Cラインで、独自のヒールテック(HealTech)技術を用いたコンプペア社の再生カーボンを初めて採用した。この素材を通して、我々はコンプペア社の可能性を存分に目にすることになる。この複合材は人体が持つ自己治癒能力からヒントを得ており、熱を加えることで自らを修復することができるリサイクルカーボンファイバーで作られているのだ。
「手に切り傷を負ったとき、私の体は再生します」とコンプペア社CEOのアマエル・コハデス(Amael Cohades)氏は説明する。「私たちはこれを自分たちがつくる複合素材に応用したいと考え、2018年に素晴らしい発見をしたのです」と彼は続ける。「熱を加えることでカーボンが自己修復する可能性があり、しかも性能や基準を維持できることがわかりました。それが、私たちの商標であるヒールテック技術へと繋がったのです」
ID Geneve Circular C SDG Limited Edition
Photo: アイディー・ジュネーブ
以来、アイディー・ジュネーブは時計をプラットフォームとして、複合素材のイノベーションを高めるという使命を果たし始め、スイス連邦鉄道(Swiss Federal Railways)はサーキュラーCでの素材の成功に注目し、ヒールテック技術を備えた再生カーボンを列車に組み込むための契約をコンプペア社と結んだ。そして今回、アイディー・ジュネーブは国連の支援のおかげで、この素材をさらに広く知らしめるプラットフォームを手に入れた。
新作サーキュラーC SDG限定モデルは、今回ニューヨーク市で、国連総会とのパートナーシップのもと、国連とニューヨーク市の協力により開催される世界最大の年間気候イベントのなかで発表された。「気候変動週間や世界のサステナビリティに貢献している素晴らしい非営利団体はたくさんありあます」とフロイディガー氏は言う。「しかし、国連と直接提携して今年の気候変動週間に参加した私たちの目的は、これらの持続可能な開発目標を達成する上で、民間企業も意識を高めることできわめて重要な役割を担っていることを示すことでした」
ID Geneve Circular C SDG Limited Edition
しかし、サーキュラーC SDG限定モデルが与えるインパクトは、意識を高めることだけではない。本モデルの総売上高の10%が、持続可能な開発目標を推進するイニシアチブに直接寄付されることで、国連に新たな収益源をもたらすことも可能になるのだ。
我々の考え
本作について少し話すと、これはきわめてオーガニックな外観と感触を持つ、多用途で軽量なスポーツモデルである。ダイヤル、ベゼル、ラグのあいだのプロポーションがうまく整えられ、ストラップの統合も巧みであるため、直径41mmのこのモデルは私のように手首がわずか5.75インチ(約14.6cm)と細い人にもよくフィットする。
ID Geneve Circular C SDG Limited Edition
リサイクル再生カーボンのダイヤルは全体に小さな斑点が見られ、その自然な外観を保っているため、真っ黒で無機質な印象ではなく、柔らかい表情を見せている。私個人のスタイルをご存じなら、私は自他ともに認める虹色好きだ。だから、17の持続可能な開発目標がレインボーカラーでダイヤルの外周とアワーマーカーに沿って描かれているのは、まさに私の好みにぴったりだった。時計を裏返すと、シースルーバックにはSDGsを称えるフルカラーホイールが描かれており、歴史的な在庫から調達され完全にオーバーホールされたETAムーブメントを垣間見ることができる。
現在の為替レートでは、若いブランドのカジュアルなスポーツウォッチとしては価格が少し高いことは認めざるを得ない。だがこのモデルが何を表しているかを知り、売上総額の10%がSDGsの達成に充てられることを理解すれば、この活動に熱心な人々にとっては十分価値のある投資となるだろう。
基本情報
ブランド: アイディー・ジュネーブ×国連(ID Geneve×United Nations)
モデル名: サーキュラーC SDG限定モデル(Circular C SDG Limited Edition)
型番: 103.099.00C
直径: 41.0mm
厚さ: 9.9mm
ケース素材: リサイクルステンレススティール(従来のSSより環境負荷が10分の1)、スイスのセーニュレジエで製造、ジュネーブのSyvaco社でブラックDLCコーティングを適用
文字盤色: コンプペア製ヒールテック技術を用いたリサイクル再生カーボン
インデックス: 分子グラデーション効果を特徴とするアプライドアワーマーカー
夜光: Billight社が開発した革新的な“3Dブロック”スーパールミノバ技術
ストラップ/ブレスレット: MIRUM社が開発した天然ゴム、植物油、ワックスから作られた非プラスチック製ストラップ、NISIAR社が手掛けたシャトー・ド・ボーカステル(Château de Beaucastel)のブドウの搾りかすから作られたバイオソースストラップ
ムーブメント情報
キャリバー: ETA 2892(歴史的な在庫から調達、完全にオーバーホールされ、高精度基準を満たすように調整)
機能: 時・分表示、センターセコンド、日付表示
パワーリザーブ: 42時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 21
追加情報: ローターは装飾され、夜光IDロゴ(SLN)が施されている
価格&発売時期
価格: 1万500ドル(日本円で約160万円)
発売時期: 発売中
限定: あり、17本限定