今夏、ロンジンは39mmのレジェンドダイバーシリーズに新たなカラーバリエーションを追加した。その仕上がりがあまりにも自然で、むしろ今まで登場していなかったことが不思議に思えるほどだ。2023年に初登場したこのロンジン レジェンドダイバー 39mmは、すでにさまざまなカラー展開を経験してきた。オリジナルブルーやブラックダイヤルに始まり、昨年はグリーン、グレー、そして“テラコッタ”の3色が加わるなど、この39mmモデルが人気を集めていることは明らかだった。だからこそホワイトダイヤルのプレビューを見たとき、これはぜひ手に入れねばと思った。
ここ5年間でヴィンテージ復刻モデルが市場にあふれているのは確かだが、ロンジン レジェンドダイバーは2007年以来、ロンジンのダイバーズウォッチ ラインにおける定番モデルとして長らく存在感を保ち続けてきた。昨年登場した現代的な3色のカラーバリエーションによって、ブランドはこのシリーズを幅広い層へ訴求する方向へとシフトし始めている。それは、おそらくツールウォッチとしてのスペックを求めつつも、日常使いしやすいルックスを望む層に向けたものだろう。そして今回のホワイトダイヤルは、マットなホワイトと真っ黒なプリントインデックスとのシャープなコントラストによって、まさに自分が求めていた理想のバランスを実現している。
新作のダイヤルでは、これまでのモデルでホワイトだった要素がすべてフラットなブラックに反転されている。立体的なアプライドインデックスには粗い質感のコーティングが施され、ダイヤル上でしっかりと存在感を放っている。この質感は時・分・秒針にもおよび、視認性を高めるコントラストを生むと同時にクリーンなデザインにツールウォッチらしい力強さを加える仕上がりとなっている。
厚みのあるボックス型風防が高くそびえ立ち、ダイヤルとそれに呼応するインナー回転ベゼルを覆っている。ケースの側面にはふたつのねじ込み式リューズが備わっており、いずれもコンプレッサーケースに着想を得たクロスハッチ加工が施されている。2時位置のリューズはインナーベゼルの操作を担い、双方向に回転が可能だ。一方、その下にあるリューズは時刻の設定と手動による巻き上げを行う。なおインナーベゼルにはクリック機構こそ備わっていないが、実際に操作してみるとリューズには十分な抵抗感があり、好みの位置にしっかりと合わせることができた。
もちろん、ホワイトダイヤルのダイバーズウォッチは本格的なダイビングに最適とは言いがたい。だが普段使いのサマーウォッチや、いわゆるデスクダイバーたちにとっては注目すべき1本である。そのほかのスペックは、これまでのレジェンドダイバー 39mmと基本的に同じで、ケース径は39mm、厚さは12.7mmだ。スタイルは、ロンジンが1950年代後半から60年代初頭にかけて採用していたEPSA社製スーパーコンプレッサーケースの意匠を忠実に受け継いでいる。ただし、現行のロンジン レジェンドダイバーはその象徴的なスタイリング(それと300mの防水性能)こそ備えているものの、スーパーコンプレッサーの名称の由来である特殊なガスケットシステムは採用していない。
装着感においては、ラグ・トゥ・ラグが47mmに抑えられているおかげで手首のサイズを問わず快適に着けられる。ラグはコンパクトで、ブレスレットのエンドリンクもすぐ下向きにカーブしておりフィット感を高めている。ビーズ・オブ・ライスのブレスレットについて触れると、見た目にも優れていてこの時計によく似合っていると感じる。つくりもしっかりしているが、リンクはピン式ではなくネジ止め式であればなおよかった。ただこのブレスレットには、52万6900円(税込)という価格の時計ではあまり見られない優れたポイントがある。それは工具不要のマイクロアジャスト機構付きクラスプだ。クラスプの内側にあるプッシャーで4段階の微調整が簡単に行える仕様となっており、操作性にも優れている。
このモデルの内部、そしてソリッドケースバックの内側には、ETAベースのCal.L888が搭載されている。自動巻きムーブメントで、パワーリザーブは約72時間。シリコン製のヒゲゼンマイを備え、COSC認定も取得しており、日差−4〜+6秒という高精度を実現している。そして、ここに日付表示窓が存在しないことを喜んでいる読者も多いはずだ。
ロンジン レジェンドダイバーや、スピリット Zulu TimeコレクションのGMTモデルのような展開を通じて、ロンジンは手の届くラグジュアリーなツールウォッチの分野でトップランナーとしての存在感を示し続けている。そしてこの新しいホワイトダイヤルのレジェンドダイバーもその例外ではない。この新作に実際に触れた人なら、誰もが今年の夏の1本に挙げたくなるはずであり、それはまさに的を射た評価だろう。