正真正銘の復刻! オメガ初の宇宙飛行時計の風貌を完全再現
1957年に誕生したオメガの「スピードマスター」は、その長い歴史の中で数々のモデルに進化してきました。その中でも、1959年から1962年にかけて製造された2代目モデル「CK2998」は、製造期間が比較的短かったこともあり、シリーズの中ではやや地味な存在と見なされることもあります。
確かに、シリーズの設計の基礎を築いた1代目「CK2915」や、アポロ11号の月面着陸を果たした4代目「ST 105.012」(いわゆる「ムーンウォッチ」)と並ぶと、CK2998はあくまで「過渡期」の製品のように思えるかもしれません。しかし、時計の価値を測る尺度は、それだけではありません。CK2998が持つ真の意義は、「オメガ初の宇宙飛行時計(The First OMEGA in Space)」という栄光の称号に他なりません。
歴史を築いた「個人的な選択」
オメガ初の宇宙飛行時計として知られるCK2998は、1962年のマーキュリー計画「シグマ7」のミッション中に、アメリカの宇宙飛行士ウォルター・シッラー(Walter Schirra)によって宇宙へと運ばれました。これは、NASAの公式命令や商業的な宣伝目的によるものではなく、あくまでウォルター個人の「私物」としての持ち込みでした。当時、NASAは宇宙飛行士に少量の私物の持ち込みを許可しており、ウォルターが選んだのがこのスピードマスターCK2998だったのです。
その後、スピードマスターは1964年にNASAのテストに正式参加し、1965年にはすべての有人宇宙飛行ミッションの標準装備として認定されていますが、それはこの宇宙飛行の約2年後のことでした。
1959年~1962年の変遷
1959年から1962年にかけて、CK2998は複数のバリエーション(CK2998-1からCK2998-6、およびCK2998-61、CK2998-62)が生産されました。これらのモデルは、製造ロットごとに細部が微妙に異なっています。
例えば、初期のCK2998-1およびCK2998-2では、タキメーター外周に「BASE 1000」という文字が刻印されていますが、CK2998-3以降は「TACHYMETRE 500」に変更されています。ウォルター・シッラーが宇宙へと持ち込んだのは、このうちのCK2998-4型とされています。
どのバージョンも、共通して1940年代にオメガとレマンシア(Lemania)が共同開発した手巻きクロノグラフムーブメント「キャリバー321」を搭載しています。このムーブメントは、柱形車(カラムホイール)と水平クラッチを採用しており、後継となる861/1861/3861シリーズの元祖であり、初代CK2915にも搭載されていた名機です。
現代に蘇る伝説
CK2998が持つ「オメガ初の宇宙飛行時計」としての特別な地位を称え、ブランドは2012年からこのモデルの復刻生産を開始しました。2012年モデル(型番311.32.40.30.01.001)はキャリバー1861を搭載し、裏蓋には海馬のエンブレムと「THE FIRST OMEGA IN SPACE」の文字が刻まれました。その後も「パンダダイヤル」などの新色が追加され、コレクターの選択肢はさらに広がっています。
現代の時計として、オリジナルのエッセンスを残しつつ現代的なアレンジを加える――それが復刻モデルの常套手段です。2024年の最新モデルも、その好例と言えるでしょう。
サイズ感の継承と最適化: オリジナルの核心となるサイズを踏襲し、直径39.7mmのステンレススチールケースを採用していますが、厚みは従来の14mmから13.4mmへと削減され、装着感が向上しました。
素材とディテールの復刻: 外周のタキメーターリングは、オリジナルと同じ陽極酸化アルミニウムを採用。90の目盛り横にある小さなドットの位置も完全に復刻されています。また、わずかに湾曲した「バブル」風の風防は、歴代モデルのアクリルからサファイアクリスタルにグレードアップされ、耐傷性が大幅に向上しています。
進化した裏蓋とムーブメント
裏蓋をひっくり返すと、海馬の模様の下に「OCTOBER 3, 1962」という文字が刻まれています。これはスピードマスターが初めて宇宙へ旅立った日付です。
そして、裏蓋の下で息づくのは、オメガのキャリバー3861手巻きムーブメントです。これはキャリバー1861をベースに進化させたもので、同軸エスケープメント、非磁性シリコン遊丝、ウェイト調整式振り子、そしてダブルT型避震装置を備え、さらに秒針停止機能も追加されています。
性能面では、メガネティック防磁性能(15,000ガウス)を備え、デュプリュール・オフ・スイス・クロノメーター(至臻天文台)認定を取得。日差は0/+5秒と、当時の名機にふさわしい高い精度を誇ります。